不安神経症は市販の薬で治せるのか。不安や緊張、動悸に用いられる市販薬・漢方とは

「不安神経症」はパニックなど激しい症状以外は、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれるはっきりしない症状が同時に発生するような性質を持ちます。

その原因となるのは、自律神経や脳の「興奮」であることが多いため、対処薬としては鎮静系のものが主に用いられます。

中には、ドラッグストアなどで売られている市販薬や漢方薬を利用されている方もいるようです。

今回は、不安神経症を市販薬で治せるのかどうか?また、一般的に不安や緊張・動悸等に用いられている市販薬の種類や特徴を解説してみました。



症状が軽度な場合や病院に行きたくない場合に頼りやすい市販薬

日本では「精神疾患」に対する理解が乏しく、自分がその症状に苦しめられた場合にでも適切な処置ができないことがほとんどです。

”精神病”や”精神科”という言葉に対する偏見もまだまだぬぐい切れていないのが実情です。

ですから、なんとなく自分が不安神経症にかかっていると気づいても認めたくなかったり、「病院に行きたくない」と考えてしまうこともあるでしょう。

また不安神経症の症状の多くは不定愁訴という不快感の集合体のようなものですので、軽いイライラや緊張感・動悸がするなどの軽度な場合は、それだけを抑えるために市販薬に頼りがちになります。

不安や緊張感・動悸などを表面的に抑える市販薬はかなりの数があり、実際に服用すればそれなりの効果を表すこともあり、多くの精神疾患に悩む人が「病気の本質」に目を向けないということが起きやすくなっています。

根本から症状を改善するためには、セルフケアを取り入れながら生活全体を見直していくことも必要だといえるでしょう。

市販薬では不安神経症を治すことはできない(利用目的をはっきりさせてから使うこと)

市販薬のほとんどは「対処的効果」しかありません。

原因の根の深い不安神経症は、表面的な苦痛を取り去るだけでは治すことはできない症候群です。

ですから、市販の薬で不安神経症の症状に対処する場合にも「これで病気が治るわけではない」ということをしっかりと認識しておくことが大切です。

市販の薬にも副作用や依存性は存在し、使い方を間違えると症状の悪化につながってしまう恐れもあります。

本格的な治療を始める前の一時しのぎといった利用目的をはっきりさせてから使うことをおすすめします。

不安や緊張、動悸に用いられる市販薬・漢方

実際にドラッグストアなどで売られている市販薬は以下のようなものです。

ウット

『ウット』は市販薬の中ではとくに依存性のある鎮静剤です。

ウットは「ブロムワレリル尿素」という主成分で、モノウレイド系に分類されます。

モノウレイド系が精神科医療に登場したのは1907年の頃で、その副作用の高さからバルビツール酸系に変わり、そして現在のベンゾジアゼピン系へと変遷しています。

精神科治療薬の流れからいうと、”歴史の古いものほど危険”という性質がありますから、なぜ現在まで依存性のある鎮静剤が市販薬で販売されているのか疑問を持つ専門家も多いのです。

米国ではすでにブロムワレリル尿素を使った治療薬は禁止されているほどですので、いくら効果があっても利用しないに越したことはないでしょう。

救心

『救心』は古くから日本で普及している和漢の丸薬で、高齢の方ならば一度くらい口にしたことがあるかもしれません。

9種類の生薬の配合により、動悸や息切れの改善が期待でき、鎮静作用もあることから不安神経症の方も飲まれている方がいるようです。

よく”漢方”と聞くと「自然の成分だから安全」と思われがちですが、それほど安易に考えて良いものではありません。

自然の生薬の中には、健康法として長期間飲み続けて良いものもありますが、病院の治療薬並みの強さと副作用のあるものも存在しますので、知識のない人が安易に使うのも危険なのです。

救心も比較的強い作用のある和漢薬であり、急場しのぎに用いるのが無難なようです。

また救心の効果で一時的に動悸が抑えられたとしても、それは根本的な不安神経症の改善にはなりません。

一時的に症状を抑えては、また再発させるということを繰り返してしまうと、不安神経症の本格的な治療を遅らせることにもなるので注意しましょう。

アロパノール

『アロパノール』はカタカナの名称ですが、漢方の「抑肝散」とほぼ同等の成分配合を持つ市販薬です。

抑肝散は、不安神経症とよく似た症状を持つ更年期障害の改善薬として用いられることが多い漢方薬です。

イライラや神経の高ぶり、怒りっぽいなどの興奮系の症状に一定の効果を発揮してくれます。

しかし、これも救心などと同様に副作用がないわけではありませんし、また根本治療にもなりません。

長期間頼り過ぎることのないように注意しながら飲むようにしたいところです。

半夏厚朴湯

『半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)』は、漢方薬の中でもメジャーな調合薬で、現在ではドラックストアでもよくみかけます。

「気の巡りを良くする」という漢方の概念にそった薬で、精神科などで処方される近代治療薬と比較すると、症状の根本部分に触れた薬理をもっているとも考えられています。

ただし本来漢方薬は、漢方医療を熟知した専門家(漢方薬剤師など)が処方します。

その際には決して「この薬を飲めば治る」とは言わないものです。

漢方治療の根幹は「病気を未然に防ぐこと」にあり、漢方薬の処方とともに、”生活指導”がなされることもあります。

そういった点から考えると、漢方薬は生活改善の補助的な存在ともいえます。

市販薬も副作用や依存の注意が必要

「市販薬には副作用がない」と思っている人がいるかもしれませんが、これは大きな間違いです。

病院で処方される薬よりは、幾分か安全な薬が多いのは事実ですが、中には健康を害してしまう副作用が存在するものもあります。

また専門家でも市販で販売されていることが危険視されているような薬も混在していますから、安易な思い込みは捨てなくてはなりません。

「依存性」についても注意が必要です。

”依存”に関しては完璧に科学で解明されているわけではなく、薬の成分そのものに依存性がなくても、人の考えや気分が原因する「精神的依存」もあります。

とくに最初に飲んで効果の高かった薬ほど、精神的依存を起こして止められなくなったり量が増えることがあります。

市販薬といえども、限界量を超えると死に至るような危険な状態になることもあるので十分に注意が必要です。

不安神経症の治療を考える場合、病院の治療薬であっても市販薬であっても根本的な治療にはならないということをまずしっかりと認識しておく必要があります。

薬物治療はあくまで「治療をサポート」するためのものであり、それ自体にすべてを求めてはいけません。

また、市販薬は取扱説明書を見ながら自分で判断をするために、病院の治療薬よりも危険な場合もあります。

これらのことをしっかりと把握し、根本的な治療である生活習慣の改善や考え方の矯正を同時に行うことを強くおすすめします。


〈まとめ〉

  • 市販薬はその手軽さからつい頼りやすい
  • 市販薬では不安神経症を完治できないため使用目的を決めて使うことが大切
  • 市販薬にも副作用と依存性が存在することを認識することが大事


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